第76回
戒強第七十六
2019.03.26更新
日本人の精神世界に多大な影響を与えた東洋哲学の古典『老子』。万物の根源「道」を知れば「幸せ」が見えてくる。現代の感覚で読める超訳と、原文・読み下し文を対照させたオールインワン。
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戒強第七十六
76 強くて大きいものは下位にある
【現代語訳】
人は生きている間は柔らかくて弱々しいが、死んでしまうと堅くこわばる。草や木など万物すべては生きている間は柔らかくて弱々しそうだが、死んでしまうと枯れてかさかさになってしまう。
だから堅くて強いものは死の仲間であり、柔らかくて弱々しいものは生の仲間である。
そうであるから軍は強いとかえって勝てず、木も強いとかえって折れてしまう。物事はすべて強くて大きいものが下位にあって、柔らかくて弱いものが上位にある。
【読み下し文】
人(ひと)の生(い)くるや(※)柔弱(じゅうじゃく)、其(そ)の死(し)するや堅強(けんきょう)。万物草木(ばんぶつそうもく)(※)の生(い)くるや柔脆(じゅうぜい)、其(そ)の死(し)するや枯槁(ここう)(※)。
故(ゆえ)に堅強(けんきょう)なる者(もの)は死(し)の徒(と)、柔弱(じゅうじゃく)なる者(もの)は生(せい)の徒(と)。
是(ここ)を以(もっ)て兵(へい)(※)強(つよ)ければ則(すなわ)ち勝(か)たず、木(き)強(つよ)ければ則(すなわ)ち折(お)る(※)。強大(きょうだい)なるは下(しも)に処(お)り、柔弱(じゃくな)るは上(かみ)に処(お)る。
- (※)人の生くるや……原文は「人之生也」であって、これを「人の生まるるや」と読み、「人が生まれたとき」と解する説もある。どちらとも読めるし、どちらとも解することができる。
- (※)万物草木……「万物」を省く説もある。
- (※)枯槁……枯れてかさかさになること。
- (※)兵……本書では軍と解したが、これを武器と解する説もある。
- (※)折る……原文は「木強則折」だが、これを「木強則共」とする説もある。そして「共」を「供」の借字とする説がある。そうすると意味は「木は強いとかえって切られて使われる」などとなる。
【原文】
戒強第七十六
人之生也柔弱、其死也堅強。萬物草木之生也柔脆、其死也枯槁。
故堅強者死之徒、柔弱者生之徒。
是以兵強則不勝、木強則折。強大處下、柔弱處上。
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